NEW!! (2025/03/14 04:18)
1977年、南海はサッチー問題で野村監督を解任した。ノムさんは「生涯一捕手」を貫き、ロッテに移籍。翌年4月、初めて大阪球場に現れた試合の事である。
守備につこうとする野村捕手に、観客の一人が『帰れ、この裏切り者!』と野次を飛ばした。 すると、内野の応援団長が『今、野次飛ばしたのは誰や!球団が解任したんやぞ!なんで裏切り者やねん!取り消せ!』 と怒鳴った。周りの客も『そや!そや!ノムさんに謝れ!』 と内野席は騒然となった。
暫くすると、『野村監督、ロッテでも頑張れ!』との声が届き、内野席は拍手に包まれた。これを聞いたノムさん、一塁側内野席に向かってマスクを取り、深々の頭を下げ、拍手と歓声が球場全体に広がる。私の隣の女性客はハンカチで目頭を押さえていた。
ホークスファンと他球団のファンには、決定的に違う点がある。それは、球団を去った選手への温かさだ。
数年前の横浜では内川、去年の所沢では山川に対し、激しい野次と猛烈なブーイングが起こった。今年のエスコンの上沢に対しても同じ様になるだろう。
しかし、福岡ドームでそんな光景は見たことがない。工藤も、小久保も、井口も、城島も、拍手で迎えられていた。一昨日、巨人のスタメンに甲斐の名がアナウンスされると、球場全体が、拍手と歓声に包まれた。育成出身の地元スターのチームへの貢献を忘れていないからだろう。
人は大切なものを失うと、その大切さを改めて認識し、失ったもの、残ったものに対する愛情が倍化するという。
ノムさんを失った野村南海ファン、球団自体を失った元南海ファン、西鉄ライオンズを失った九州のファンの寂しさのDNAが、他球団では決して見られないような、大きな野球愛、選手愛を育ててくれたのだろう。
球団も日本一なら、ファンも日本一だと思う…。