即戦力にこだわりすぎている?
「ヤクルトは、投手の視察については熱心な印象が強いですね。特に、即戦力候補といわれる大学生や社会人の投手の視察には、幹部クラスや他のエリアの担当がよく顔を見せています。それだけ、ピッチャーが課題だという認識は強いのではないでしょうか。ただ、上位で指名している選手は、『ある程度、完成されているけど、将来性は疑問』というタイプが多いように見えます。『なるべく早く戦力になる投手を探してほしい』というリクエストを受けてのことだとは思いますが……。そうなると、どうしても、プロでは特長が見えない投手が多くなりますよね。エースとして期待された奥川恭伸が怪我で低迷していることも、もちろん誤算だとは思いますけど」(パ・リーグ球団スカウト)
名前の挙がった奥川は、2年目に9勝をマークして、日本一に貢献したものの、その後の3年間は、わずか8試合の登板で3勝にとどまっている。くわえて、コメントにもあったように、即戦力候補の投手が多く、過去10年で上位指名した15投手のうち、高卒は寺島と奥川に限られる。
今年は、吉村やヤフーレ、サイスニード、高橋奎二が100イニング以上を記録しているが、ヤフーレとサイスニードは今年限りで退団する。その分を補うには、若手の底上げが必要だ。しかしながら、二軍の投球回数の上位を見ると、阪口皓亮(元DeNA)や沼田翔平(元巨人)、高梨裕稔(元日本ハム、ヤクルト)といった他球団からの移籍選手が並ぶ一方で、生え抜きの若手投手は戦力になっていない。
即戦力の期待を集めた投手がなかなか戦力にならず、チームを押し上げるようなスケールの大きい投手をあまり獲得してこなかった。これが、今のチーム状況に反映されている。
今年のドラフトでは、中村優斗(愛知工業大、ドラフト1位)、荘司宏太(セガサミー、ドラフト3位)という即戦力が期待される投手を獲得している。育成ドラフトで指名した広沢優(愛媛マンダリンパイレーツ、育成2位)も来年で24歳、下川隼佑(オイシックス、育成3位)が25歳と、こちらも早くから戦力として期待される年齢である。これらの指名を見ても“過去の流れ”を踏襲しているといえるだろう