八王子のヒマ鷹 (ID:OTg4M2J)
ホークス物語67(ダイエー編)

長いプロ野球の歴史の中で、ファンが味方のチームの選手に物を投げつけるようなシーンは初めて見た。96年5月9日、日生球場での近鉄戦の「生卵事件」である。

王監督就任1年目、チームが結束出来ず最下位に沈んだホークスは2年目も負け続け、その日の時点で9勝22敗でダントツの最下位だった。 当日レフトスタンドは、外野応援団「関西鷹狂会」を中心にかなり荒れており、発煙筒が投げ込まれた。
「王辞めろ」
「その采配が王まちがい」
「5年も待てるか、今すぐ辞めろサダハル!」
「病原性敗北菌OHー89」
目を覆いたくなるような横断幕が掲げられていた。

試合後半、選手に対する応援はボイコットし「やる気がないならやめちまえ!」の連呼が聞こえてきた。試合終了と同時に外野スタンドの網を超え、多くのファンがグランドに雪崩込んできた。手には生卵を持っている。ベンチ裏へ逃げ込んだ選手達がバスに乗ろうとすると、生卵が投げられる。

這う這うの体でバスに乗り込むと、今度はバスを取り囲み、フロントガラスに向けても投げ続けた。「お前ら、それでもプロか!」と口々に罵声を浴びせ、バスの外は騒然となっている。選手達は言葉を一言も発する事が出来ず、バスの中はお通夜のような沈痛な雰囲気に包まれた。

「あんなやつら人間じゃない。」その時、入団3年目の小久保は、そう思ったと言う。

ホテルに戻ると直ぐミーティングが開かれた。王監督がマイクを握る。「いいか、ああいうファンこそ本物なんだぞ。我々が将来優勝したら、一番喜んでくれるのは、ああいう人達なんだ。我々が出来る事は、勝って、勝って、勝ちまくって、彼らを喜ばせるしかないんだ。」聞きながら、多くの選手が涙を流していたという。

「この日のミーテングの事は生涯忘れる事が出来ない。」小久保は語っている。「この時、『死ぬほど練習して、絶対に王監督をこの手で胴上げするんだ』そう心に誓った瞬間だった。」

多くの選手が同じ気持ちだっただろう。それまで、大きな溝があったホークスの首脳陣と選手は、この日を境に結束していく。

地獄を見たチームに、もう、怖いものなど無くなっていた……
返信する(No.354294)
⚾️好きな選手:牧原、周東、モイネロ、スチュワート
就活編集削除⚽サッカー掲示板

返信コメントをする

💬 返信コメント:0件

※返信コメントがありません


🔙TOPに戻る