南海ホークス物語B
もし昭和36年当時「流行語大賞」があれば、大賞は間違いなく「円城寺事件」であっただろう……
6度目の対決となった南海・巨人の日本シリーズ第4戦、2-1で迎えた9回裏巨人最後の攻撃、南海側は切札のスタンカを登板させる。……二死一塁から二つのエラーで満塁とされるが、スタンカは、最後の打者・宮本を2-1と追い込んだ。 ラストボールは、ほぼまん中のフォーク。見逃し三振!と野村捕手が思って腰を上げた瞬間、円城寺球審が「ボール!」の判定……
この試合、度々出ていた南海側に不利な判定に、南海ベンチの不満が爆発、鶴岡監督も猛然と抗議するも判定は覆らない……試合再開後、冷静さを失ったスタンカが宮本に逆転サヨナラ打を許し、南海は大切なゲームを失い、シリーズもこの試合で流れは巨人に傾いて、ジャイアンツは6年ぶりの日本一に輝いた。
試合の解説をしていた青田昇氏・西本幸雄氏は「明らかなストライクですね……南海側は納得行かないでしょう……」と解説。11PMの大橋巨泉氏も「僕は巨人ファンだが、あれはミスジャッジ……」と後日語っている。……新聞は連日「世紀の誤審か…」と特集し、このシーンをパロディ化した映画も生まれた。
世間が大騒ぎになる中、パリーグ会長もコミッショナーに「この問題の善処を要望する。日本シリーズの在り方も検討しなければならない……」とコメント……シリーズの存続にまで影響を与える大事件に発展した。
事態を収拾させたのは、鶴岡監督であった……「円城寺球審にも、これからの人生がある……これ以上の騒ぎは好ましくない……」この発言を切っ掛けに事件は沈静化に向かう。
「円城寺、あれがボールか、秋の空……」
ある商社マンが詠んだこの句が、世相を反映する俳句コンテストに入賞し、やり場のない怒りを抱えている南海ファンの溜飲を少しだけ下げてくれた……