Numberより
初めて肘にメスを入れたカープの守護神・栗林良吏が「ケガの功名」で得た正しい身体の使い方
もちろん“勤続疲労”はあったが、手術に伴いそれだけが理由ではないと気づかされた。リハビリ期間に自身の投球フォームを分析し、右肘に負担のかかる身体の使い方になっていたことが分かったのだ。
栗林の場合、コッキング期(投球において、腕を後方に引いて肩と肘を最大限に外旋させる動作)で肘が下がっていたことが一因だと分かった。
けがをしない身体づくりだけでなく、バイオメカニクスなどの視点をもつ物理学的なアプローチから身体の使い方を見つめなおした。
投手陣のメニューが個別練習となる春季キャンプの午後の時間のほとんどで、栗林は1月から続ける右肘に負担のかからない身体の使い方のドリルを繰り返した。今ではドリルも10種に増えている。
「最初は分かっていてもできないことが多かった。今でもできないことがあるし、難しい。でも頭で考えるのではなく、身体に覚えてもらうしかない。キャンプの間にしっかりとやりこんで、無意識にできるようになれば」
「変えることって難しくて、違和感があると投げられない。フォームがいくら良くなっても、打者から見たら打ちやすければ意味がない。できるだけ肘が痛くならないフォームで投げて結果が出れば、それが成長の証拠になると思う」
「大瀬良(大地)さんのようにパフォーマンスを上げることが一番大事だと思っている。手術明けのシーズンでしっかり結果を出せれば、次に手術する人にマイナスな手術じゃないと示せる。そういう点でも何とか結果を出したい」
開幕に向けて一歩ずつ段階を上がっていく栗林が目指すのは、復帰ではなく「進化」だ。