ホークス物語65（ダイエー編）

「ダイエー・王監督誕生！」日本中の野球ファンが驚いたこのニュースの影には、やはり根本監督の熱心な勧誘活動にあった。

93年Jリーグだ誕生し、根本は大変な危機感を覚えたという。道具にお金が掛かる野球より、これから日本の子供はサッカーを始めるだろう。野球人気はサッカーに取られてしまうかもしれない。食い止めるには、やはり野球の二枚看板・ON対決しかない。根本は、何と監督就任時から『ダイエーにワンちゃんを連れて来る』と瀬戸山代表に話していた。

巨人監督を退任し６年間浪人していた王氏には、横浜と日ハムが「監督をやってくれないか」と依頼して来た。しかしながら、「その気はありません。」と断られると、彼らは「そらそうですよね。」と直ぐ諦めてしまった。ところが、根本監督は、決して引き下がらない。

『俺は単なる思い付きで彼を監督に来てほしいと思っているのではない。野球界の危機を救いたいという使命感があった。少々断られたからといって、諦める訳にはいかない。』当時の心境を語っている。 「ダイエーの球団方針を聞いて欲しい」と、毎月食事に誘い、5回6回と口説き続けた。

「巨人では水原氏が戦後球界復帰すると、三原氏は西へ下り宿願の打倒巨人を果たした。」
「長嶋君が巨人の長男なら、貴方は次男。次男は家を出て、実家に恩返しをすべき。」
「ＯＮ対決を日本シリーズで実現させ野球熱を再燃させるのが、貴方の責任だ。」ありとあらゆる言葉で説得し続けた。

「周りは皆、反対していた。根本さんのお誘いが１回２回なら、私もその気には成らなかった。しかし、5回6回と説得されると、ホークス側の熱意を徐々に感じ、九州に来ることを決断するに至った。」王さんは語っている。

何度も何度も足を運び、熱心に説得を試みる。こんな地道な努力が日本が誇る偉大な野球人の心を動かし、ホークスという球団の、そして、プロ野球の歴史を変えることになった。

根本氏の偉大な功績に、ホークスファンとして、そしてプロ野球ファンとして、改めて感謝したい……